パーマの原理について毛髪診断士がわかりやすく解説

パーマの原理について毛髪診断士がわかりやすく解説

美容室、及び自宅で気軽に施術することができるパーマ。

そのパーマを安全に、そしてより美しいヘアスタイルを楽しむためにも、原理を知って正しい知識を身につけることは重要です。

今回は美容師の方をはじめ、一般の方にもわかりやすいように毛髪診断士が解説していきます。


まずはパーマの原理をおおまかに知る

パーマとは、毛髪内部のコルテックスに作用することで化学変化を起こし、直毛をウェーブ状にすることをいいます。

このコルテックスの主成分はケラチンと呼ばれるタンパク質です。ケラチンは18種類のアミノ酸が集まって構成されており、そのアミノ酸どうしがさまざまな結合をしています。

毛髪を構成するアミノ酸の結合は以下の4つ

  1. シスチン結合(S-S結合、ジスルフィド結合ともいう)
  2. 塩結合(イオン結合ともいう)
  3. 水素結合
  4. ペプチド結合

これら結合により、毛髪は強度、弾性などを保つことができていますが、パーマでは第1剤によってこのシスチン結合を切断、カールをつけた後に洗い流し、第2剤で再結合することで毛髪に形をつけます。

シスチン結合は実際にはどんなに強い還元剤を使用したとしても毛髪の20%までしか切断できませんが、その効果は大きく、見た目の印象を変えることができます。

それでは実際の美容室で施術する順に詳しく見ていきましょう。

パーマ第1剤で毛髪内部の結合を切断する

パーマ第1剤の中身

  1. 還元剤
  2. アルカリ剤
  3. 安定剤

パーマの第1剤は毛髪中のシスチン結合を切断するために「還元剤」といわれるものを使用します。酸化作用を有する物質を酸化剤といい、一般的にチオグリコール酸やシステインを使用します。

これらの還元剤はアルカリ環境下で活発に作用するため、パーマの第1剤にはアルカリ剤が配合されています。またアルカリ剤は髪の表面にあるキューティクルを開き、毛髪を膨張させて薬剤を浸透しやすくする効果も。

パーマの第1剤のpHはおおよそ7〜9のアルカリです。髪の毛を構成するケラチンが安定する「等電点」といわれる安定領域はpH4.5〜5.5の弱酸性ですから、薬剤によって弱酸性からアルカリに傾くと、髪の毛が傷むことが知られています

髪の毛を守るために毛髪表面にあるキューティクルを無理やり開き毛髪を膨張させるということは、キューティクルの脱落、毛髪内部のタンパク質の流出が伴い、毛髪が痩せ細ってしまうのです。

参照:毛髪・ヘアケアの基礎知識第2版

その結果、切毛、裂毛、枝毛が発生しやすくなります。

「パーマをかけたら髪の毛が傷んでしまった」

「パーマをかけた後がヘアケアを入念に行いましょう」

といったことをよく目にするのはこのような理由があるからです。

ロッドを巻いたり伸ばしたりして形を変える

第1剤の薬剤を塗布したら、シスチン結合を切断がはじまります。

ここでロッドをまいたり、曲げたりすることで毛髪自体の形が変化します。

細いフェーブを作る場合は細いロッド、緩やかなウェーブを作る時は太いロッドを使用し、最終的にお客様が希望する形になるようにカールを調整します。

ストレートパーマの場合はコームで伸ばす

ストレートパーマも一般的なパーマと同じ原理で作用します。

カールやウェーブを目的としたパーマとは異なり毛髪をストレートにするためのものですから、コームで伸ばすことが一般的です。ストレートに特化したパーマはコームで伸ばしやすいように粘性が高いものを使用することがあります。

しかしながら、強いくせ毛の場合ストレートパーマをかけても、コームだけでは理想のストレートヘアにすることは難しいでしょう。

強いくせ毛をストレートにするにはヘアアイロンの熱を利用した縮毛矯正が効果的です。

パーマ第2剤で毛髪内部の結合を再結合する

パーマ第2剤の中身

  1. 酸化剤
  2. 安定剤

第1剤をシャワーで洗い流した後はすでに毛髪の形が変わっており、この状態で毛髪内部の結合を固定させるために「酸化剤」である第2剤を塗布します。

第2剤の有効成分である臭素酸塩や過酸化水素は、酸素を放出することによって切断したシスチン結合を再結合させます。

ここまでの要点をまとめると以下のようになります

  • 第1剤で毛髪内のシスチン結合を還元して切断
  • 第2剤で酸化して再結合
  • ウェーブパーマとストレートパーマの違いは、第2剤で酸化するときに毛髪が曲がっているか真っ直ぐかの違い

パーマのデメリット

パーマの第1剤はアルカリ性の薬剤を使用しますから、デメリットもあります。

  1. 髪が傷む
  2. 頭皮や顔に薬剤がつくとかぶれることがある
  3. 爪などにつくと爪の形が変形する

2と3については、頭皮に薬剤をつけない、パーマの施術をする人は手袋を着用することで予防することができます。

一方、1の「髪が傷む」という事象については避けて通ることができません。

すなわち、パーマ施術後のヘアケアが重要なポイントとなります。ここでパーマ後のヘアケアについて見ていきましょう。

パーマをかけたあとのヘアケアは注意が必要

パーマをかけたことによる毛髪のダメージ、損傷は以下のようなものがあります。

  1. アルカリ性薬剤を使用したことによる毛髪表面のキューティクル脱落
  2. キューティクルが開いている、乱れている
  3. アルカリ性薬剤を使用したことによる毛髪の膨張、それに伴う毛髪内部のタンパク質流出
  4. システイン酸が生成されることによる内部からのダメージ

上記のダメージにアプローチするには、パーマをかけた後の自宅でのホームケアで対処するしか方法がありません。まず優先するべきは、パーマ後に適切なシャンプー及び、トリートメントを使用することです。

パーマ後に使用して欲しいシャンプー&トリートメントの特徴

  1. 弱酸性
  2. アミノ酸系、ベタイン系界面活性剤使用のもの
  3. コルテックスを構成するタンパク質に近い毛髪補修成分が配合されているもの
  4. キューティクルを保護、補修する成分が含まれているもの

毛髪が安定する弱酸性のシャンプーを

パーマをかけた後は、毛髪がアルカリに傾いている部分が残っています。第2剤で使用する酸化剤で処置しているとはいえ、少なからずシスチンが結合しきれない部分(システイン酸)もでてきます。

このシステイン酸は毛髪ダメージの原因の一つとなります。

システイン酸発生

またアルカリ性に傾いた髪は不安定な状態ですから、弱酸性のシャンプー及びトリートメントを使うと良いでしょう。

※逆にアルカリ性の石鹸シャンプーなどは毛髪ダメージを悪化させる可能性がありますので使用を控えることをおすすめします。

おさらいになりますが、髪の毛を構成するケラチンはpH4.5〜5.5の弱酸性が等電点であり、もっとも安定する領域です。髪の毛のダメージを最小限にするためにも弱酸性のシャンプー、トリートメントでケアすることは重要です。

パーマ後に使用することで毛髪補修可能なシャンプーはこちらで詳細を見ることができます。


パーマの原理についてまとめ

パーマがかかる仕組み

  1. 第1剤に含まれる還元剤で毛髪内部のシスチン結合を切断
  2. ロッドなどを使用して好きな形にカールさせる
  3. 第2剤に含まれる酸化剤を使用して、カールした状態でシスチン結合を再結合

パーマのデメリット

  1. 髪が傷む
  2. 頭皮や顔に薬剤がつくとかぶれることがある
  3. 爪などにつくと爪の形が変形する

パーマ後に使用して欲しいシャンプー&トリートメントの特徴

  1. 弱酸性
  2. アミノ酸系、ベタイン系界面活性剤使用のもの
  3. コルテックスを構成するタンパク質に近い毛髪補修成分が配合されているもの
  4. キューティクルを保護、補修する成分が含まれているもの

とくに、パーマをかけた後のホームケアは大変重要な役割を果たします。一度ダメージを受けた髪の毛は自己回復はできませんから、ヘアケア製品を使用してホームケアで大切な髪を補修、保護してあげましょう。